TOPICS

マウス腎臓被膜下に移植した卵巣からマーモセット卵?の取得、胚?産に世界初の成功 ?ヒト?殖補助医療に資する胚操作技術の開発?

ポイント

  • 異種間移植した霊長類卵巣から初めて卵子取得、胚※1生産に成功した。
  • これまで未利用なまま廃棄されてきたマーモセット卵巣を有効利用でき、小規模な施設でも比較的廉価にマーモセット卵子取得が可能となる。
  • 本手法により、遺伝子改変マーモセット作製の効率が飛躍的に高まることが期待される。

概要

新潟大学脳研究所モデル動物開発分野?大学院生の平山瑠那(現?富山大学大学院生命融合科学教育部 認知?情動脳科学専攻行動生理学講座?大学院生)と同大学脳研究所動物資源開発研究分野の竹鶴裕亮特任助教は、新潟大学名誉教授の﨑村建司博士、同大学脳研究所モデル動物開発分野の阿部学准教授、動物資源開発研究分野の笹岡俊邦教授、富山大学学術研究部医学系(大学院生命融合科学教育部 認知?情動脳科学専攻行動生理学講座)の高雄啓三教授らと共に、マーモセット卵巣をマウスの腎臓被膜下に移植する異種間卵巣移植※2を行い、マウス体内で発育させた卵胞※3からマーモセットの卵母細胞※4を採取することに成功しました。さらに、採取した卵母細胞を体外で成熟?受精させ、胚盤胞※5まで発生させることにも世界で初めて成功しました。本手法は動物実験における3R原則※6に配慮した、遺伝子改変マーモセット作製のために必要な卵子の新しい供給方法となることが期待できます。
本研究成果は、2023年10月24日、科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

用語解説

(※1)胚
個体発生の初期段階であり、受精卵のことです。

(※2)異種間卵巣移植
異種動物に卵巣を移植することです。本研究では、細胞性免疫によって移植組織が排除されない免疫不全マウスの腎臓被膜下にマーモセットの卵巣組織片を移植し、ホルモン投与によって卵子を成熟させています。

(※3)卵胞
卵母細胞を取り囲む細胞および膜のことです。

(※4)卵母細胞
未成熟な卵子のことです。体内では卵胞に包まれた状態で成熟していきます。

(※5)胚盤胞
子宮に着床することが可能になった胚のことです。

(※6)3R原則
動物実験適正化の国際原則で、Replacement(代替法の利用)、Reduction(使用動物数の削減)、Refinement(苦痛軽減を中心とする動物実験の洗練)の頭のRをとって3R原則と呼ばれています。

研究内容の詳細

マウス腎臓被膜下に移植した卵巣からマーモセット卵?の取得、胚?産に世界初の成功 ?ヒト?殖補助医療に資する胚操作技術の開発?[PDF, 703KB]

論文情報

論文名

Production of marmoset eggs and embryos from xenotransplanted ovary tissues

著者

Runa Hirayama?, Hiroaki Taketsuru?, Ena Nakatsukasa, Rie Natsume, Nae Saito, Shuko Adachi, Sayaka Kuwabara, Jun Miyamoto, Shiori Miura, Nobuyoshi Fujisawa, Yoshitaka Maeda, Keizo Takao, Manabu Abe, Toshikuni Sasaoka* & Kenji Sakimura*
?equally contributed, *cocorresponding autho

DOI

https://doi.org/10.1038/s41598-023-45224-x

お問い合わせ

富山大学学術研究部医学系
教授 高雄啓三

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