世界最小電圧で光る青色有機ELの開発に成功
~有機ELディスプレイの省エネ化?長寿命化に向けた大きな一歩~
研究のポイント
- 乾電池(1.5V)1本で駆動する、世界最小電圧で発光する青色有機ELの開発に成功
- 2種類の有機分子の界面を使った独自の発光原理で青色発光を実現
- 有機ELテレビやスマートフォンディスプレイなどの省エネ化に向けた大きな一歩
概要
東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所/大阪大学 接合科学研究所の伊澤誠一郎准教授(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者兼務)、富山大学の森本勝大准教授、静岡大学の藤本圭佑助教らの研究グループは、乾電池(1.5V)1本をつなぐだけで光る、世界最小電圧で発光する青色有機ELの開発に成功した。
有機ELはテレビやスマートフォンディスプレイなどで実用化されている一方で、駆動電圧が高く消費電力が大きいという問題を抱える。特に赤、緑、青の光の三原色の中で最もエネルギーが大きな青色の発光を得るのが一番難しく、通常は4V程度の電圧が必要である。伊澤准教授らは2種類の有機分子の界面でアップコンバージョン※1という過程を起こす独自の発光原理を用いて、超低電圧で光る青色有機ELの開発に成功した。開発した有機ELは、462nmの青色発光が1.26Vから認められ、1.97Vでディスプレイ程度の発光輝度に到達した。このような超低電圧での青色発光は2014年ノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードでも不可能なため、有機?無機材料、双方を含めても世界最小電圧で光る青色発光素子と言える。
三原色の中でディスプレイの消費電力に占める割合が最も大きい青色有機ELの駆動電圧を大幅に低減できる新技術を発明したことは、テレビやスマートフォンなど有機ELを使ったディスプレイ機器の消費電力を削減する上での大きな一歩となる。
本研究は主にJST戦略的創造研究推進事業さきがけ(研究代表者:伊澤誠一郎)の支援により実施され、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所/大阪大学 接合科学研究所の伊澤誠一郎准教授、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の真島豊教授、富山大学の森本勝大准教授、中茂樹教授、静岡大学の藤本圭佑助教、高橋雅樹教授、分子科学研究所の平本昌宏名誉教授らによって行われ、本研究成果は9月20日付の「Nature Communications」に掲載される。
用語解説
(※1)アップコンバージョン
エネルギーの低い励起状態からエネルギーの高い励起状態を作り出すプロセス。その中の1つである三重項―三重項消滅は、2つの三重項励起状態が衝突することで、1つのエネルギーの高い一重項励起状態を作り出す。
研究内容の詳細
世界最小電圧で光る青色有機ELの開発に成功~有機ELディスプレイの省エネ化?長寿命化に向けた大きな一歩~[PDF, 1MB]
論文情報
論文名
Blue Organic Light-Emitting Diode with a Turn-on Voltage of 1.47 V著者
Seiichiro Izawa, Masahiro Morimoto, Keisuke Fujimoto, Koki Banno, Yutaka Majima, Masaki Takahashi, Shigeki Naka, Masahiro Hiramoto掲載誌
Nature CommunicationsDOI
https://doi.org/10.1038/s41467-023-41208-7