高血圧症の一種「原発性アルドステロン症」の新規原因遺伝子を発見 薬が効かない高血圧症の病態解明に新たな視点
ポイント
- 高血圧症の一種である「原発性アルドステロン症」の原因となる、接着分子CADM1の遺伝子変異を発見
- 遺伝子変異の結果、副腎皮質細胞の細胞間コミュニケーションを不良にし、副腎皮質細胞におけるアルドステロン産生を増加させることを解明
- 本研究成果が、治療抵抗性高血圧症の病態解明に新たな視点をもたらすと期待
概要
近畿大学医学部（大阪狭山市）病理学教室主任教授 伊藤彰彦、富山大学 先端抗体医薬開発センター副センター長 教授 髙岡裕、東北大学大学院医学系研究科 特任教授 佐藤文俊（執筆当時：難治性高血圧?内分泌代謝疾患地域連携寄附講座 教授）、広島大学大学院医系科学研究科 講師 沖健司（執筆当時）らの研究グループは、ロンドン大学クイーンメアリー校を中心とする国際共同研究に参画し、高血圧症の一種「原発性アルドステロン症」の新たな原因として、接着分子CADM1の遺伝子変異を同定しました。
さらにこのCADM1遺伝子が、副腎皮質細胞の細胞間コミュニケーションを維持し、アルドステロンの過剰産生を抑制する役割を果たしていることを明らかにしました。本研究成果は、ホルモン産生に接着分子が関与していることを示した画期的な成果であり、治療が難しい高血圧症の病態解明と今後の治療法開発に新たな視点を提供するものです。
本研究成果は、2023年6月9日（金）午前0時（日本時間）に、国際的な遺伝学専門誌「Nature Genetics」にオンライン掲載されました。
研究内容の詳細
高血圧症の一種「原発性アルドステロン症」の新規原因遺伝子を発見 薬が効かない高血圧症の病態解明に新たな視点 [PDF:1MB]
論文詳細
論文名
Somatic CADM1 mutations in aldosterone-producing adenomas and gap junction-dependent regulation of aldosterone production
（アルドステロン産生腺腫におけるCADM1体細胞変異とアルドステロン産生のギャップ結合依存性制御）
著者
Xilin Wu、Elena A. B. Azizan、Emily Goodchild、Sumedha Garg、萩山満、Claudia P. Cabrera、Fabio L. Fernandes-Rosa、Sheerazed Boulkroun、Jyn Ling Kuan、Zenia Tiang、Alessia David、Masanori Murakami、Charles A. Mein、Eva Wozniak、Wanfeng Zhao、Alison Marker、Folma Buss、Rebecca S. Saleeb、Jackie Salsbury、手塚悠太、佐藤文俊、沖健司、Aaron M. Udager、Debbie L. Cohen、Heather Wachtel、Peter J. King、William M. Drake、Mark Gurnell、Jiri Ceral、Ales Ryska、Muaatamarulain Mustangin、Yin Ping Wong、Geok Chin Tan、Miroslav Solar、Martin Reincke、William E. Rainey、Roger S. Foo、高岡裕、Sandra A. Murray、Maria-Christina Zennaro、Felix Beuschlein、伊藤彰彦、Morris J. Brown
掲載誌
Nature Genetics
インパクトファクター：41.367（2021年）