温暖化環境下において東南極氷床が融解し得ることを発?~海?が将来?幅に上昇するリスクへの警鐘~
本研究のポイント
?過去の温暖期(最終間氷期)における東南極氷床の著しい縮小を発見。
?この氷床の縮小が海面上昇に影響していることを解明。
?南極氷床と海面変動の将来予測の高精度化への貢献に期待。
発表概要
北海道大学低温科学研究所の関 宰准教授、同大学大学院環境科学院博士後期課程の飯塚 睦氏、同大学大学院地球環境科学研究院の入野智久准教授、山本正伸教授、富山大学の堀川恵司教授、国立極地研究所の菅沼悠介准教授、産業技術総合研究所の板木拓也研究グループ長、高知大学の池原 実教授、ロンドン大学のデビット?J?ウィルソン博士、インペリアル?カレッジのティナ?ファンデフリアート教授らの研究グループは、東南極沖の海底堆積物コア(*1)の解析から、地球表層が温暖化していた最終間氷期(13?11.5万年前)において、東南極(*2)の一部の氷床(*3)が後退し、当時の海面上昇に大きく寄与していたことを解明しました。
近年の温暖化により、西南極(*2)氷床の融解が加速しており、今後数メートル規模の海面上昇につながる可能性が指摘されています。一方で、東南極氷床は西南極氷床に比べて温暖化に対して安定的であると考えられてきましたが、近年になって東南極氷床の一部でも融解が観測され始めたため、今後の温暖化により著しい融解が起きる可能性が注目されています。
本研究では、過去の温暖な時代(最終間氷期)における東南極氷床の変動を復元し、将来の温暖化によって氷床が縮小する可能性を検証しました。その結果、13?11.5万年前の最終間氷期に、東南極氷床の著しい縮小が2回発生していたことが明らかとなりました。これらの縮小は、海面を約0.8メートル上昇させる規模であったと見積もられています。したがって、今後も地球温暖化が続く場合には、西南極氷床だけでなく東南極氷床の一部も融解し、より大きな海面上昇が引き起こされる可能性があることが示されました。
なお、本研究成果は、2023年4月18日(火)公開のNature Communications誌に掲載されました。
研究内容の詳細
温暖化環境下において東南極氷床が融解し得ることを発?~海?が将来?幅に上昇するリスクへの警鐘~[PDF, 841KB]
用語解説
(注1)妊娠高血圧症候群
妊娠中期に発症する疾患で、母体の高血圧?タンパク尿?そのほかの臓器障害を引き起こします。また、胎盤の働きの低下による、胎児発育不全を伴うこともあります。
(注2)制御性T細胞(Treg)
CD4+ T 細胞の一種ですが、免疫応答を抑える働きを持ちます。自分自身に対する免疫応答を抑え、自己免疫疾患にならないようにする役割や、胎児を母親の免疫応答から守る働きをします。
論文情報
論文名:Multiple episodes of ice loss from the Wilkes Subglacial Basin during the Last Interglacial(最終間氷期におけるウィルクス海盆からの複数の氷床縮小エピソード)
著者名:飯塚 睦(1、2、3)、関 宰(2)、デビット?J?ウィルソン(4)、菅沼悠介(5、6)、堀川恵司(7)、ティナ?ファンデフリアート(8)、池原 実(9)、板木拓也(3)、入野智久(10)、山本正伸(10)、平林幹啓(5)、松崎浩之(11)、杉崎彩子(3)
(1)北海道大学大学院環境科学院、(2)北海道大学低温科学研究所、(3)産業技術総合研究所、(4)ロンドン大学、(5)国立極地研究所、(6)総合研究大学院大学、(7)富山大学、(8)インペリアルカレッジロンドン、(9)高知大学、(10)北海道大学大学院地球環境科学研究院、(11)東京大学
掲載誌:Nature Communications(英科学誌)
DOI:10.1038/s41467-023-37325-y